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続編 第三章 嫉妬しちゃう心3

last update 最終更新日: 2025-01-19 17:54:16

二人きりだったわけじゃないよね。

疑いたい気持ちが出てきたけれど大くんを信じよう。

立ち上がってお弁当を冷蔵庫に入れる。食べる気が湧かずミネラルウォーターをグラスに注いで飲んだ。

そこにバスルームから戻ってきた大くんが頭を拭きながら近づいてくる。

「俺にも一口頂戴」

ニコッと笑って私の手からグラスを抜き取った。そして喉を鳴らして美味しそうに飲んでいる。

モヤモヤしている気持ちが嫌だったから、意を決して質問しようと思った。

声が震えないように冷静を装って質問を投げかける。

大くんはミネラルウォーターをおかわりしようと冷蔵庫から取り出して、グラスに注いだ。

「……今日って、何人集まったの?」

さり気なく、普段の会話のように話しかける。

二人以上であれば安心できるし、勘違いをしたままでいたくない。

水を飲み終えた大くんは平然と答えた。

「二人だよ」

「大くんと、あと二人の友達が来たの?」

「いや、俺ともう一人」

……二人きりだったってことだ。

サーッと血の気が引いていくような感覚に襲われた。

これ以上質問を重ねてもいいのだろうか。もっと悲しい気持ちになるかもしれない。それなら聞かないほうがいいんじゃないか。

「そう。楽しかった?」

私は嘘の笑顔を作りながら会話を続ける。

「うーん。どちらかと言うと話を聞いていたって感じだからな。定期的に話を聞いてやらないと爆発しちゃうみたいでさ。困ったやつだよな」

ずいぶん仲のいい友達で、付き合いが長いようだ。

私の知らない大くんを知っている人なのかもしれない。

大くんはソファーに座ってスマホを手に取った。

さっき届いたメッセージを読んでいるようだ。すぐに返事をしている。

大くんはマメな性格だから深い意味はないと思うけど……女の人に返事を書いていると思うと、胸の奥底から嫌なものが沸き上がってくる。

「お風呂入ってくるね。大くん、疲れてるだろうから、先に寝ていていいからね」

目を合わせることもできずにバスルームに逃げ込んだ。

気持ちを落ち着かせるように熱いシャワーを思いっきりかけた。

「……紗代って誰なのよ……」

そして、私はもう一度ため息をついた。

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    「妹が置いていった服ならあるけど。サイズ合うかな」「勝手に借りていいのかな?」「心配なら聞いてやるか」スマホで電話をはじめる。「あ、舞? 久実に服貸していい?」『えー! 家にいるの? 泊まったってことは、えーなに? 付き合ってるとか~?』ボリュームが大きくて話している内容が聞こえてしまう。「付き合ってくれないけど、まぁ……お友達以上だよ。じゃあな」お友達以上だなんて、わざとらしい口調で言った赤坂さんは、得意げな顔をしている。「……じゃあ、お借りするね」黒のニットワンピース。着てみるとスカートが短めだった。ひざ上丈はあまり着たことがないから恥ずかしい……。着替えている様子をソファーに座って見ている。「見ないで」「部屋、狭いから仕方がないだろう」「芸能人でお金もあるんだから引っ越ししたらいいじゃない」「結婚する時……だな」その言葉にドキッとしたが、平然を装った。私と……ということじゃない。一般的なことを言っているのだ。メイクを済ませると赤坂さんは立ち上がって近づいてくる。見下ろされると顔が熱くなった。「可愛い。またやりたくなる……」両頬を押さえつけたと思ったら、キスをされる。吸いつかれるような激しさ。顔が離れる。赤坂さんの唇に色がうつってしまった。「久実……愛してる」……ついつい私もって言いそうになった。「せっかく 口紅塗ったのに汚れちゃったじゃないですか」 私はティッシュで彼の唇を拭った。 すると 私の手首をつかんで動きを止めてまた さらに深くキスをしてきた。「……ちょっ……んっ」「久実、好きって言えよ」「……時間だから行かなきゃ」

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』78

    久実sideふんわりとした意識の中、目を覚ますとまだ朝方だった。今日は休みだからゆっくり眠っていたい。布団が気持ちよくてまどろんでいると、肌寒い気がした。裸のままで眠っている!そうだった……。また、赤坂さんに抱かれてしまったのだ。逃げればいいのに……逃げられなかった。私の中で赤坂さんを消そうと何度も思ったけど、そんなこと無理なのかもしれない。すやすや眠っている赤坂さんを見届けて、ベッドから抜けようとするとギュッとつかまれた。「どこ行くつもりだ」「帰る」「………もう少しだけ。いいだろ」あまりにも切ない声で言うから、抵抗できずに黙ってしまう。強引なことを言ったり、無理矢理色々したりするのに、どうして私は赤坂さんのことがこんなにも好きなのだろう……。もう少しだけ、赤坂さんの腕の中に黙って過ごすことにした。太陽がすっかり昇り切った頃、ふたたび目が覚めた。隣に赤坂さんはいない。どこに行ってしまったのだろう。自分のスマホを見るとお母さんから着信が入っていた。「……ああ、心配させちゃった……」メールを打つ。『友達と呑みに行くことになって、そのまま泊まっちゃった』メッセージを送っておいた。家に帰ったら何を言われるだろう……。恐ろしい。「おう、起きてたのか」赤坂さんはシャワーを浴びていたらしい。上半身裸でタオルを首にかけたスタイルでこちらに向かってきた。あれ……昨日は一人じゃ入れないって言ってたのに。なんだ、一人で入れるじゃない。強引というか、甘え上手というのか。私はついつい赤坂さんに流されてしまう。そんな赤坂さんのことが好きなのだけど、このままじゃいけないと反省した。「今日、休みだろ?」「……うん」「じゃあ、大樹の家行こう」「は?」唐突すぎる提案に驚いてしまう。「暇だったらおいでって連絡来たんだ。美羽ちゃんも久実に会いたがってるようだぞ」美羽さんの名前を出されたら断りづらくなる。優しい顔でおいでと言ってくれたからだ。「でも……服とかそのままだし……」「そこら辺で買ってくればいいだろ」「そんな無駄遣いだよ」まだベッドの上にいる私の隣に腰をかけた。そして自然と肩に手を回してくる。「ちょっと……近づかないで」「なんで?」答えに困ってうつむくと赤坂さんは立ち上がってタンスを開けた。

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